戸建て住宅の外壁は、常に直射日光や風雨など屋外の厳しい環境にさらされています。長年住むにつれて、徐々に色あせたり、カビや汚れが目立つようになったりと経年劣化していくのは、仕方のないことです。とはいえ、外壁塗装の傷みが気になり始めたら、そろそろ塗り替えを検討する時期だと言えるでしょう。
どんな外壁塗装にも、寿命があります。建物を長持ちさせるためにも、メンテナンスを兼ねた定期的な外壁塗装の塗り替えは不可欠です。その際、全面的に塗り替えるのであれば、元の塗装色に戻すのではなく、今までとは違ったカラーや配色で外観をセンスアップさせたいと考える方が多いようです。実際、壁の色を変えるだけで、建物自体のデザインはそのままでも、住まいのイメージを一新できるためです。
住まう人のセンスの良さや、おしゃれなライフスタイルが感じられるような、外壁塗装の色選びと、その組み合わせについて、注意点を踏まえながら、ご紹介します。
ダーク系の色に目立つ色を
ダーク系のカラーは、センスの良く仕上がる塗装色のひとつ。ダーク系の塗装色は、シックでモダンな仕上がりが魅力ですが、気をつけなければならない点もあります。色そのものの重たさや暗さが強調されやすく、センスの良しあし以前に、近寄りがたくて冷たい雰囲気を与えてしまうという点です。そのため、ダーク系の塗装色を選ぶ場合には、単色使いよりも、多色使いにするといった工夫が必要です。例えば、目を引くアクセントカラーを加えて、色のバランスを調整するという方法も有用です。
*アクセントカラーの面積比
色彩学では、基本となるベースカラー70%、その補助的な役割をするアソートカラー25%、アクセントカラー5%の配分が、もっとも色彩の調和が取れた状態だとされています。アクセントカラーを使用する際には、この面積比を意識してみましょう。
*アクセントカラーの効果的な配置
アクセントカラーの配置は、元の住宅のデザインを上手に利用すると効果的です。窓の形状を囲ったり、ベランダに沿って縦ラインを入れたりといった具合に配置すると、センスよくまとまります。その際、アクセントカラーが悪目立ちしないよう、低彩度の色味を選ぶと失敗が少ないでしょう。
例えば、ダーク系のブラウンやグレーをベースカラーに選んだ場合、全体の5%ほどの面積に、アクセントカラーとして鮮やか過ぎないオレンジや赤を取り入れてみましょう。アクセントカラーの効果で、全体が引き締まって、ほどよくスタイリッシュな印象に変わります。
ツートンカラーによる塗り替え
外壁塗装に使用する色は一つだけと思い込んでいませんか。塗装に使う色数には特に決まりはなく、ほとんどの業者では何色でもどんな風にでも塗り分けを依頼できます。とはいえ、むやみに多色使いをすると、派手な印象になって、建物の品格を失いかねません。その点、ツートンカラーでの塗り替えなら、さりげなく個性やセンスを感じさせることができるため、スタイリッシュな外観を実現できそうです。
*理想のイメージを具体化
ツートンカラーの配色を決める前に、途中であれこれと迷ってしまわぬよう、まずは、理想の外観イメージを固めておくことが大切です。あまり難しく考えず、「ナチュラル」、「スタイリッシュ」、「クラシック」、「モダン」など、好みにあった言葉を書き出していくと、自分の理想のイメージをつかみやすくなります。では、次に、それぞれのイメージに合わせた色の組み合わせを、具体的に考えていきましょう。
*同系色でベーシックにまとめる
穏やかでやわらかい雰囲気に仕上げるなら、同系色から二色を選んでみましょう。ツートンカラーのコントラストが強く出過ぎないよう、一色をアイボリーからベージュにかけてのナチュラル色から選び、もう一色をその同系色からを選びます。どちらの色をベースカラーにしても、穏やかな印象にまとまります。また、クラシックな雰囲気を出したい場合には、塗装面を上下に分けて、下側を濃い色で塗ると、落ち着いた印象に仕上がります。
*中間色でスタイリッシュに見せる
同系色以外の色を組み合わせるなら、ツートンカラーのひとつにグレーを取り入れると色選びがスムーズです。グレーは、暖色でも寒色でもない無彩色の仲間。モダンで、クールなイメージが印象的で、外壁の塗装色としても人気の高いカラーです。グレーは汚れが目立ちにくいうえ、どんな色とも相性がよいのが特長。好みの色がすでに決まっていて、もう一色に悩んでいるなら、グレーと組み合わせてみましょう。きっと、良い引き立て役になってくれるはずです。
*境界線にひと工夫
ツートンカラーの配色を決めたものの、ふたつの色なじみが良くないと感じたら、ふたつの色の境界線(セパレートライン)にもう一色を加えてみましょう。色がうるさくならないよう、セパレートラインに使う色はツートンカラーどちらかの同系色のなかから、引き締め効果のある濃いめの色を選びます。少しテクニックが必要な塗り分けですが、セパレートラインを挟むことで、ふたつの色が自然になじむとともに、見た目のオシャレ度も格段にアップします。
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大きく色を変える
外観を大胆にイメージチェンジしたいと考えているなら、今までの外壁塗装と色の系統ごと、すっかり変えてみましょう。例えば、暖色系から寒色系に、淡い色から濃い色へといった具合に、思い切って変更するのがコツです。
あまり大きく冒険するのは失敗が怖いという方には、どこかひとつ色の共通点を残しておくとよいでしょう。例えば、暖色系から寒色系にイメージチェンジする場合、もともとがペールトーン(淡い色合い)の色味であれば、その部分は変えず、ペールトーンの暖色からペールトーンの寒色へと変更してみてはいかがでしょうか。
カタログ+αで色を考える
外壁塗装の色選びや組み合わせは、実にバリエーションが豊富。この自由度の高さが、かえって色選びを難しくしているとも言えます。そんなとき、頼りになるのがカタログ見本。カタログ掲載の塗装色は、塗料メーカーが塗装色としての適合性、流行や人気度などあらゆる面を熟慮したうえで、数ある色のなかから選定した、いわばプロのお墨付きです。そのため、あれこれ悩むよりも、まずは、カタログからベースとなる色を選ぶことをおすすめします。
カタログから塗装色を選ぶ際に注意したいのが、色の面積効果。色は、面積の広さによって、その見え方が異なり、小さな見本ではわずかだった色合いの差が、広い面積で見ると大きな違いに感じます。実際、塗り広げると、薄い色はより薄く、濃い色はより濃く感じられます。そのため、色見本で色を判断する際には、できるだけ大きな見本(できればA4サイズ以上)を使って、自然光のもとで色の見え方を確認しましょう。どうしても決めかねる場合には、薄い色はひとつ濃いめを、濃い色は一段階控えめな色を選ぶと失敗が少ないようです。
こうしてカタログから基本色を決めたのちに、実際にアイテムを選んでいくと、流れがスムーズです。カタログから選んだ色をベースに、実際の住居のデザインや、サッシやドアなど塗り替えできないパーツとの色合わせを加味しながら、実際の塗装色を微調整していくとよいでしょう。
周辺住居とのバランスを考える
外壁の塗装色は、住居全体の印象を大きく左右します。そのため、せっかく塗り直すなら、誰もが注目するようなオシャレで目立つ外観にしたいという気持ちで前のめりになりがちです。ところが、あまりに目立つ塗装色は、街並み全体の調和を損ないかねません。そのため、塗装色を大きく変える場合には特に、周囲から浮いた存在にならないように、周囲の家との色のバランスを見ることも重要です。
塗り替えで新築気分を楽しもう
外壁塗装は、今までと同様の色に塗り直すこともできますが、時代やライフスタイルの変化に合わせて、色を変えてみませんか。塗装を塗り替えるだけで家の印象がガラッと変わり、まるで新築のような佇まいに生まれ変わらせることができます。外壁をセンス良く塗り直すことで、住み慣れた家の外観をリフレッシュして、もう一度、新築気分を味わってみませんか。