「あれ、ここの塗装、剥がれている……」。そんな箇所を発見したら、オーナーさんとしては大きなショックですよね。外壁塗装が剥がれてしまう原因はさまざまで、経年劣化だけではなく施工不良の場合もあるのです。今回は外壁塗装が剥がれてしまう原因、そしてケースに応じた補修法、保証についてもご紹介します。
外壁塗装が剥がれてしまう原因
そもそも、外壁塗装はどうして剥がれてしまうのでしょうか。
外壁を塗装するといっても、単に塗料を塗るだけではありません。下地の補修をし、下塗りによってしっかりした素地をつくり、その上に塗料を数回に分けて塗ることで美しく耐久性のある塗装が完成します(後の工程のことを中塗りと上塗り、または上塗り2回と呼びます)。この工程のどこかに問題がある場合、短期間でも剥がれが起きる可能性があるのです。
特に、下塗りは壁と上塗りされる塗料を密着させる役割があります。上塗りの塗料は密着性を求めず下塗りとの密着性を考えて作られているため、下塗りをせず上塗りのみをすると密着力は非常に低い状態になります。そのため下塗りは非常に重要です。シーラー(プライマー)や弾性フィラーといった塗料が使われますが、塗布する量が少ないと壁の素材にシーラーが吸い込まれてしまいます。これでは、壁に上塗り塗料を直接塗っているのと変わらない状態になってしまうため、完全に密着していない塗料が容易に剥がれてしまうのです。
なお、壁の素材が傷んでいるほど塗料をよく吸い込んでしまうのですが(下塗りを多く行う必要がある)、それだけではなく、塗装前の高圧水での洗浄や凸凹をなくす下地処理(ケレンと呼びます)が不十分であっても剥がれの原因になるので注意が必要です。
これらに加えて大切なのが各工程での乾燥です。下塗り・上塗りと外壁に塗料を重ねていくわけですが、それぞれの工程で適切に乾燥させていないと塗膜が完全でないために形成不良になってしまい、剥がれを起こしてしまいます。
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実際に剥がれが起きた! ~ DIYでの補修
どのように外壁塗装が剥がれてしまうかについて見てきましたが、実際に剥がれが起きてしまったらどのように対処すればよいのでしょうか。
実は、小さな剥がれであればDIYで修繕することも可能です。モルタル壁(砂とセメントを混ぜて作られた壁素材)を例にとると、以下のようなプロセスになります。
- 補修箇所の汚れ・油分を落として乾燥させる
- 充填剤を塗りこみ平坦にする
- 塗装
再度の剥がれを防止するために、最初に補修箇所をきれいにすることが大切です。ゴミやほこりはもちろんのこと、油分も大敵なのでしっかりと落とすようにしましょう。それらが終わったら充填剤を塗りこんで平坦にならしていきます。充填剤もそれを塗るためのヘラもホームセンターなどで簡単に見つけることができます。この時に上から塗装ができるものとできないものがありますので、どちらの充填剤かを確認することが大事です。そのあとの塗装は下塗り・中塗り・上塗りと分けて行います。すでに説明したように、単に上塗り用の塗料を塗るだけでは効果がないので必ず重ねて塗り、十分な乾燥にも気を配るようにしましょう。
実際に剥がれが起きた! ~ 専門の業者に依頼
外壁塗装の小さな剥がれの補修は手間がかかるもののDIYで行えます。ただし、それはあくまでも応急処置。ごく小さな箇所であればいいのですが、もし剥がれの箇所が広ければ、やはりプロに見てもらうことが一番です。
外壁のトラブルの中でも、剥がれは冒頭で見たような施工不良によるものが多いと言われています。一般的に8~10年程度の寿命と考えられている外壁塗装が2~3年で剥がれてきた場合には、保証があれば業者側のミスとして無料で再工事となることもあります。しかしこのような瑕疵担保は概ね2年程度と言われていますのでそれ以上の場合は対応してもらえない場合もあります。しかしながら一度は工事を行った業者にまずは相談してみるとよいでしょう。
ただし、残念ながら悪質な業者が存在していることも事実で、補修を依頼するにあたっても注意が必要です。手抜き工事によって発生した剥がれをまた不完全な塗装によって補修され2年後に再度剥がれが発生、といった事態は避けたいところ。インターネット上でトラブルの例を見てみると、悪質な業者は「このままでは危ない」といたずらに不安をあおって、契約をするケースが多いようです。また、なんの理由もなく半額以上もの大幅な値引きを提示してきたり、再度の塗装工事が不要になるといった過度な品質の保証をしてくる場合もあります。オーナー側の対策としては、見積の相場や耐用年数についての正しい知識を持つことが役立ちます。またある程度大型の物件になると施工期間が長くなり2ヵ月以上かかるような場合資金力がない業者だと、その期間に職人への支払等をする必要があるので、途中で工事が出来なくなるケースもありますのでその業者の売上等も見ておく必要があると思います。従来に比べると、最近ではインターネット上でそうした情報も得やすくなっていると言えるでしょう。
実際に剥がれが起きた! ~ ダメージが壁材にまで
剥がれが起きた場合の補修について、気を付けておきたいのが剥がれの原因が表面の塗装にない場合です。つまり、塗装よりもさらに下の壁材そのものに問題があり、そこから塗装も剥がれてきているというケースです。壁材のひび割れをクラックと言い、これが発生すると建物自体の強度が下がったり雨漏りを起こしたりしてしまうこともあり、深刻な問題と言えるでしょう。原因は構造そのものや増築に起因したり、壁材の乾燥だったりすることもあります。
塗装の剥がれを発見したとき、壁材そのものに問題があるかどうかという判断を素人がするのは簡単ではありませんが、補修の対応が変わってくることだけは最低限覚えておきましょう。外壁塗装を行う業者にも請け負える工事に違いがあるためです。特に工務店ではなく塗装を専門に行う業者であれば、必要な建築補修ができない可能性もあります。この場合は(建築時の業者にお願いする場合を除き)リフォーム会社や工務店に見積を依頼することになりますが、外壁塗装を得意としているか(または施工実績があるか)を確認するようにするとよいでしょう。
外壁塗装の剥がれには保証が効かない?
すでに述べたように、通常10年程度の寿命のある外壁塗装に短期間で剥がれが発生したら、施工業者のミス(施工不良)も疑われます。しかし、実際には無償での再施工が受け入れられないこともあります。というのも、施主と業者の間で外壁塗装に関する保証をしっかり取り決めているケースが少ないからです。また、たとえ保証内容として「施工側の明らかな瑕疵(ミス)が認められれば対応します」と謳っていたとしても、「原因は施工ではありません」と業者に拒否されてしまえばオーナー側が自ら施工不良を証明するのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。
この部分は残念ながら法律で何らかの義務になっているわけではないので、対策としては事前(施工前)にしっかり保証について検討しておくしかないと言えます。保証は大きく分けると業者自身が提供しているものと加盟している業界団体が提供しているものがあります。
前者の自社保証の場合には、ひな形があるわけではなく見極めが難しいところですが、主に2種類があります。一つは“製品保証”で製品に問題があった場合に保証されるものです。もう一つが“施工保証”で施工に問題があった場合に保証されるものになります。保証期間が3年を超えるような保証は“製品保証”である場合が多いのですが、この場合塗料メーカーが自社製品に問題があるとするケースは稀です(もし問題があればその商品を使った施工は全て問題になる可能性があり保証が莫大になるからです)。そのため製品保証では保証されるケースが極めて限られると考えておいた方が良いともいます。また施工保証に関しては施工に問題があったと認識をされる必要がありますが、変色や?れの場合は保証される場合が多いと思われます。ただし、どのような保証であっても塗料は必ず劣化していきますので3年以上たった場合は、経年劣化による変退色やひび割れは保証範囲外だと思った方が良いと思います。そのため、異様に長い保証期間の場合は、それが“施工保証”なのか“製品保証”なのかをまず確認してください。その後施工保証であればどこが対象となり、どこが対象にならないのか、どのような場合に保証対象になるのかを確認しておくことが大事です。そのため保証の期間を、悪質な業者を判断するポイントととらえることも可能です。つまり、寿命が10年程度にも関わらず15年~20年保証を提示するというのは、何か背景があると考えてよいでしょう。
こうした自社保証に対して、業界団体が提供している保証や国土交通省が推奨している「リフォーム瑕疵保険」等があり第三者の目が入ってくるので安心と言えるかもしれません。建築産業専門団体連合会が提供するタイル工事の「長期性能保証制度」、日本塗装工業会の塗装工事に関する「ペインテナンスキャンペーン」などがあります。これらの団体が提供する保証を活用するメリットは、細かく決められている内容のほかにも、万が一施工した業者が倒産してしまった場合にも最長5年の保証が受けられるという点が挙げられるでしょう(保証期間はそれぞれ)。また、リフォーム瑕疵保険に加盟している業者であればその制度を使ったリフォームの保証を受けられ、万が一業者が倒産しても保証される制度ですが、残念ながら外壁塗装に限ってみると1年しか保証されません。ただし防水工事や屋根の工事などは5年以上の保証を受けられる場合があります。
またリフォーム瑕疵保険は第三社の保険会社が企業の審査をしたうえで加盟を決定しているので、加盟していることも安心材料になります。保険を受けるためには、施主様自体が一定の費用を支払う必要があるのが難点ですが、工事中、工事後に専門家のチェックを受けれる点が良い点だとは言えます。
外壁塗装の剥がれは、美観を損ねるだけではなく、放っておくと雨水が入り込んで損傷部分が広がってしまうため、早急な対処が求められます。原因を正しく理解して、補修の方法や業者の選定、そして保証についても確認することが重要だと言えるでしょう。