外壁塗装では色だけでなく、仕上げのパターン(模様)によっても雰囲気が左右されます。最近はすでに模様がついたサイディングボードが主流ですが、職人さんの腕によるパターンも人気があります。外壁の仕上げにおけるパターンの種類を紹介します。
外壁のパターン(模様)ってなに?
外壁のパターン(模様)を考える前に、まずはサイディングボードとモルタル壁の違いについて、ご説明しましょう。
■サイディングボード
現在多くの住宅で使用されているサイディングボードは、製品として出来上がった板状の建材です。材質やデザインにより性能が変わります。
■モルタル壁
すのこ状に板を貼った上に防水紙と網状の金物を貼り、モルタル(水・砂・セメント等を調合したもの)を塗り付け、その上から塗装して仕上げるものです。
サイディングボードのパターン(模様)
サイディングボードは、工場でパターンをつけた完成品を現場に持ち込んで、その場で貼り合わせていきます。完成品を扱うため、作業効率がよく、作業に特別の技術は要しない(通常の技術は必要)というメリットがあります。ボードの貼り合わせ部分にゴム製の樹脂を入れ込む必要があります。この部分が劣化すると浸水の可能性があるので注意しましょう。
モルタル壁のパターン
一方モルタルの場合は、材料をその場で塗り込んでいきます。そのままべた塗りをすることもできますが、パターンを作りたい場合は職人の腕でパターンを施します。施工に技術を要し、作業者の熟練度によって仕上がりに差がつくおそれがありますが、外壁のデザインや意匠性にこだわりたい人にはおすすめです。
モルタル壁は腕の立つ職人を雇う費用や作業の手間などが工費に反映されるぶん、価格が高くなる可能性もあります。また、サイディングと比較してひびが入りやすい性質がありますので、目を配っておきたいです。
見積もりや仕上がり具合を施工業者とよく打ち合わせ、価格とデザイン性を秤にかけて決定したいですね。
■外壁塗装におけるパターンの重要性■
サイディングにもパターンをつける工法はありますが、基本的にはもともと模様がついている場合が多いです。一方モルタルの壁にはなにも模様がついていないため、外壁に凹凸でパターンをつけて個性をつけます。外壁塗装の目的は家の保護や劣化を防ぐ実用性が第一ですが、外観の美しさを保つことも重要です。パターンには塗料を吹き付ける方法と、ローラーで模様を作る方法、職人がコテによって作る方法などがあり、工法によって実現できるデザインが異なります。
吹き付け工法
スプレーガンと呼ばれる霧状の塗料を、専用の道具で壁に吹き付ける方法です。ガンの種類によって模様が変わります。噴射式で、短時間で塗装をすることができますが、周囲に塗料が飛散してしまったり、それによって塗料のロスが出てしまったりするといったデメリットもあります。臭いや音も発生するため、施工する時間帯に気を使ったり、養生をしっかり行ったりするなど隣接家屋への配慮が求められるでしょう。
*リシン仕上げ(砂壁状模様)
昔からある模様で、艶消しで、落ち着いた雰囲気の凸凹模様が特徴的。コストが抑えられ安価というメリットもあります。塗料に骨材(細かい砂利や砂)を混ぜて専用ガン(リシンガン)で壁に吹き付けます。混ぜる石はさまざまな大きさがあり、小さい石ならばきめ細かな模様に、大きければ荒い模様の仕上がりになります。ひび割れが多いという難点がありますが、ひび割れしにくい「弾力リシン」というものも存在します。
また、リシンの凸凹をさらに職人が荒く削る、「リシン掻き落とし」という工法もあります。掻き取りの加減で微妙な変化を付けることも可能です。
*吹きつけタイル仕上げ(ボンタイル)
単純にタイルというと、サイディングボードの「タイル模様」を指す場合もあるので、「吹きつけタイル」というといいでしょう。この吹きつけタイルは、玄関やお風呂場の床に敷き詰めるようなものではありません。タイルは紙粘土のような練り物素材になっており、外壁に吹きつけて使用します。デザイン的な特徴としては、凸凹した模様でありながら、艶ありが主流で表面が陶器のようにツルツルとしています。こちらもリシン仕上げと同様、ゴムのような質感を持った弾性ボンタイル仕上げも登場しています。
*スタッコ仕上げ
リシン塗装に近いイメージですが、リシンよりも5~10ミリほど厚く塗ります。吹きつけたまま、スタッコを吹き放して仕上げ、吹きつけ後にさらにコテやローラーで凸部を平らに抑える工法を、スタッコ凸部仕上げやスタッコ仕上げなどといいます。リシン仕上げよりも厚みがあるぶん、立体的で重厚感のある仕上がりになるほか、耐久性も向上します。
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ローラー工法
ローラーを使用することで、刷毛よりも効率よく外壁塗装を行うことができます。そのため外壁塗装の主流はローラー塗りですが、そのローラーを使って模様をつける工法があります。ローラーの種類によって模様が変わるのが特徴です。ローラーにはさまざまなタイプがありますが、主にスポンジ状のマスチックローラーと、毛状のウールローラーに分かれます。
*ウールローラー仕上げ
耐水型紙でできた芯に植毛したものが用いられます。後述するマスチックローラーよりも均一塗りに適しているローラーです。毛丈は「短毛」「中毛」「長毛」に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
- 短毛:平坦な面を塗装するのに適している
- 中毛:主に使われるローラーで、短毛と長毛、どちらの特徴もあわせ持つ
- 長毛:長い毛が奥まで入り込むので、凸凹をきれいに塗ることができる
*マスチックローラー仕上げ
円柱にスポンジ状の繊維を取り付けたもので、砂骨ローラー、多孔質ローラーなどといわれます。スポンジ部分が塗料を大量に取り込むため、塗料の含みがいいです。そのためウールローラーよりも厚塗りすることができます。
マスチックローラーは、目の粗いものから細かいものまであり、それによって塗料の吸い込みを調整することができます。「ゆず肌ローラー仕上げ」はその代表的な工法で、ローラーを丁寧に塗ると、均一のさざ波模様ができる工法です。ただ、「ゆず肌」は雑な塗装で意図しないさざ波模様ができてしまった状態を指すこともあるので注意が必要です。
また、ローラーが入り込めないような細かいような部分は、昔ながらの刷毛を使用します。刷毛の種類もサイズ、毛の種類ともにさまざまです。
コテ工法
左官職人がコテを使って模様をつける方法です。どんな模様でも作ることができ、デザインの幅が広いのが特徴です。デザインが豊富なうえに、塗料によっても模様が変わるためイメージをつかみにくいかもしれません。その場合はカタログを見ながら決めると良いでしょう。ただ、種類が多いため業者によっては対応できないものがあるかもしれません。意匠性が高いうえに技術力も問われるため値段も高価になります。
パターンを知って、オリジナルの塗装を
本来外壁は家を保護するのが目的のはずですが、これだけ豊富なデザインが生まれている以上、外観の美しさを保つ、家を引き立てるといったニーズが高いことがわかります。意匠性が高い職人さんのパターン、それぞれの特徴を知って好みの外壁塗装をしてみませんか?