光触媒とは塗料の1つで、これからの外壁塗装業界で期待されている新種です。といっても製造する塗料メーカが少ないので、普及率は高くありません。ゆえに外壁塗装で光触媒を使用するとなると、価格は割高傾向といわれています。一方、光触媒とは対照的に早くから開発され、今もなお進化を遂げているのが「無機ハイブリッド」と呼ばれる塗料です。そこで今回は、光触媒と無機ハイブリッドを比較し、どちらが本当に外壁塗装に適した塗料なのかを検証していきます。
近年の外壁塗装で耳にする光触媒とは?
期待の新種と呼ばれる光触媒では、原料の「酸化チタン」が関係する効果に着目してみましょう。
*セルフクリーニングをはじめ3つの効果が自慢
光触媒は、「セルフクリーニング効果、遮熱効果、空気清浄効果」の3つが主な特徴といわれています。その理由は、原料の酸化チタン(白色)に関係しています。
酸化チタンの特性として知られるのが「超親水性」です。親水性とは水と物質とのなじみやすさのこと。ガラスなどに水が付着すると水滴を作りますが、親水性が非常に高いと、その水が水滴にならずに薄く膜が広がります。このことを超親水性といいます。酸化チタンは日光などの光を浴びることにより親水性が超親水性に変化するため、塗料部分に水膜ができることで静電気の発生を防ぎ、ちりやホコリが付着しにくくなるのです。
また、油や排煙(主に排気ガスなどの大気汚染)によりついた外壁の汚れは、酸化チタンにより作られる活性酸素の働きで分解されて再び浮かび上がり、雨と一緒に洗い流されます。これが光触媒のセルフクリーニング効果であり、防汚性が非常に優れているといわれる所以なのです。
そのほか、光触媒には、赤外線を反射することで外壁に熱を蓄積させない遮熱効果を持ったものや、活性酸素が空気中の窒素化合物を酸化して空中除去する清浄機能を持つような塗料も開発されています。
外壁塗装における光触媒の実用性
さまざまな効果を持つ光触媒ですが、実用性となるとやや物足りなさは否めません。これも新種ならではの宿命なのでしょうか。
*乾きにくい、手間がかかる、ひび割れしやすい
前述したことをうのみにすると光触媒塗料は優れた塗料のように感じますが、あくまで「光触媒を前提にしたうえ」でいわれていることです。光触媒は塗料のために開発されたものではなく、研究のプロセスに過ぎません。よって、塗料としての実用性では課題があるのも現実です。まず、光触媒塗料は紫外線や水と反応することを想定していますが、建物同士が隣接する場所では日光・雨が当たらないところでは意味がなくなってしまいます。次に、酸化チタンを塗膜に平均的に散りばめないと効果が期待できないのですが、非常に小さな粒子のため均等にできていることを確かめることができません。、その為、均等に塗布できる施工技術の開発が必要なのですが、現時点で一般的には実用化されていません。そのため、塗料としてはしっかりした機能を持った塗料として製品化できていますが、実際に施工した後の塗膜にその機能が発揮できているかという点が不透明なのが現状です。しかし開発コストがかかることもあり、シリコン系塗料などの主流と比べて塗料価格が高く、施工費用も割高傾向にあるといわれています。ちなみに、外壁塗装時の相場価格は、主流と呼ばれるシリコン系塗料に1.5倍ほど上乗せするそうです。広く普及するには時間がかかるかもしれませんね。
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現在の外壁塗装業界で進化を遂げる無機ハイブリッド塗料とは!?
無機ハイブリッド塗料は無機塗料をベースとしていますが、正確には無機塗料も有機混合なので、純粋な無機物からできた塗料というのは一般的には存在しません。
*天然鉱物ならではのパワーが魅力!
無機ハイブリッド塗料とは、有機塗料と無機塗料を混合したものです。有機塗料の原料は、主にシリコン樹脂やフッ素樹脂です。無機塗料は鉱物(主に石や岩などの天然物)と有機塗料の原料をブレンドさせてあります。よって、無機ハイブリッド塗料は、有機塗料に何を使うかで特徴が変わり、無機物の代表である石などに見る「太陽光からのダメージを受けにくい」という強度を持ち合わせています。世の中に最後まで残る文字は石に書いた文字だと言われています。実際に太古の昔の文字で残っているのは石板です。簡単にイメージとして言えばは、石を砕いたものに合成樹脂などが混ざったペンキを塗る、といったところでしょう。耐久年数の目安は、シリコン樹脂との組み合わせで12年~15年、フッ素樹脂との組み合わせで15年~25年といわれています。価格相場は、100万~150万くらいの価格になります。
外壁塗装における無機ハイブリッド塗料の実用性
天然鉱物のパワーは太陽光に強いだけではないのです。静電気を防止したり、火にも強かったりと万能な力を発揮します。そんな無機ハイブリッド塗料は、光沢保持率がずば抜けています。
*圧巻の光沢率を誇るハイブリッド塗料!
無機ハイブリッド塗料には、鉱物をベースとした無機塗料ならではの実用性があります。それは、低汚染性や防汚性といった「汚れにくいこと」、難燃性や不燃性といった「燃えにくいこと」、「光沢率が高いこと」の3点です。低汚染性の理由は、光触媒塗料同様、ハイブリッド塗料にも親水性を持たせることができるからです。親水性は有機塗料の方に混ぜられていることが多く、鉱物に親水性があるわけではありません。とはいえ鉱物自体が静電気の発生を防ぐため、光触媒同様にちりやホコリを寄せ付けない状態を保ちます。難燃性の理由は、石や岩に見る無機物の強度にあります。鉱物自体が太陽光からのダメージを受けにくいように、火であってもその威力は発揮されます。光沢保持率の高さは、メーカーの実験で証明されています。その会社の耐候性試験では、シリコン樹脂塗料の光沢保持率が約10%(塗装後200時間経過)、フッ素樹脂塗料の光沢保持率が約20%(塗装後250時間経過)、無機ハイブリッド塗料にいたっては約80%(塗装後300時間経過)という結果が出ています。一方、無機ハイブリッド塗料にもデメリットもあります。それは普通に考えるとそのような良い効果がある無機塗料を増やせばいいと感じるのですが、無機の比率を増やすと固くなり割れやすくなる、樹脂の混ざりが悪くなるなどのため安易に無機成分を増やすことができません。またその樹脂の割合は企業秘密であることが多く、無機ハイブリッドや無機塗料と記載されていても実際にどの程度無機成分が入っているかが判断できない点です。また無機顔料は色褪せに強いですが、出せる色が限られている点が欠点となっています。また、基本的に塗料は艶があるのが基本で、艶を消すために艶消し材を入れるとその成分で耐候性が変わってくるという欠点があります。しかも無機ハイブリットはツヤが消しにくく。調整しても3分~5分までが消せる範囲になるそうです。ツヤの有無は施主の好みによりますが、ツヤが出る外壁塗装の方が汚れにくく、耐久性もあるといわれています。とはいえ耐久性はもちろん、主流のシリコン塗料と組み合わせできたり、外壁塗装をすることで難燃性も発揮してくれたりするため、実用性はありそうですね。
外壁塗装の観点で光触媒とハイブリッド塗料を検証
光触媒とハイブリッド塗料の特徴をはじめ、メリットやデメリット、相場価格、耐久年数が分かったところで、2つの塗料を検証してみます。※〇がプラス要素 ×がマイナス要素
*光触媒塗料
・汚れにくい(親水性) 〇
・紫外線に強い 〇
・遮熱性がある(一部塗料) 〇
・空気清浄力がる 〇
・光触媒機能が隣接する建物で影響を受けない ×
・ひび割れしやすい ×
・施工に手間がかかる ×
・相場価格は120万円~150万円 ×
*ハイブリッド塗料
・汚れにくい(親水性) 〇
・紫外線に強い 〇
・燃えにくい 〇
・光沢が持続する 〇
・塗料の組み合わせが多彩 〇
・外壁塗装が隣接する建物で影響を受けない 〇
・ツヤが消しにくい ×
・相場価格は100万円~120万円(シリコン系およびフッ素系塗料)+α 〇
プラス要素となる〇の数は、光触媒の4つに対してハイブリッド塗料が7つ。マイナス要素は、光触媒が4つ、無機ハイブリッド塗料が1つでした。相場価格は、無機ハイブリッド塗料が+αのため、2つは意外と僅差だったりするのかもしれません。ということで、今回の検証結果では『無機ハイブリッド塗料の方が外壁塗装の実用性に優れている』ということが分かりました。
無機ハイブリッド塗料は組み合わせが多彩なことから、用途や価格など、施主側の希望に合わせやすい点が魅力です。組み合わせによる詳しい効果や耐用年数、価格を知りたい場合は、契約前に確認するとよいでしょう。一方、光触媒は新種のため、外壁塗装業者によっては酸化チタンが持つ効果を悪用して、光触媒をうたい文句にするケースも存在します。そこから高額請求に発展する問題も多いようなので注意が必要です。