外壁塗装に使われるセラミック塗料。よく聞く名称ですが、そもそもセラミックにはどのような効果があるのでしょうか? セラミックに対して「機能性が高い」、「見た目が良い」などのイメージを持つ人もいますが、中には間違った情報も少なくありません。塗装工事での失敗を避けるためにも、正しい知識を知っておきましょう。
セラミック塗装とは?
塗料の中にセラミック(細かく砕いた陶磁器)が入っているものを、セラミック塗料と呼びます。セラミックはグレードではなく原料のことなので、最初にこの点を押さえておきましょう。誤解されやすいのですが、一般的な樹脂塗料のグレードはアクリル・ウレタン・シリコン・フッ素であり、セラミックは添加剤として使われているだけです。つまり、一般的な塗料で「セラ」と名前が付いた塗料は、正確にはセラミックが配合されたシリコン塗料やウレタン塗料のことだと考えましょう。
また、一口にセラミック塗料といってもベースとなる塗料(アクリル・ウレタン・シリコンなど)により、耐用年数などが異なります。
セラミック塗装によくある間違い
外壁塗装にセラミック塗料を使いたいという人は多いですが、中には間違った知識を持つ人もいます。この章では、間違いやすいポイントについて解説します。
*セラミックはグレードに含まれない
前段落の「セラミック塗装とは?」で解説したように、セラミックは添加剤の一種です。しかし、グレードのことだと勘違いしてしまう人が少なくありません。「セラミック塗料=グレードが高い」という認識は間違いであり、セラミックが配合されることで耐候性が少し高くなる効果はありますが、あくまでベースとなる樹脂の性能プラスアルファだと考えたほうが良いです。
*セラミック自体には断熱性がない
セラミック塗料の中には、断熱性の高い商品も存在します。そのイメージが強いためか、「すべてのセラミック塗料に断熱性がある」と勘違いしてしまう人もいるようです。
セラミック自体には熱に強く熱伝導率も低いので断熱性能を持たせることも可能ですが、塗料としての断熱性能は塗膜の中のセラミックの含有量に左右されます。一般的な塗料のセラミックの含有量くらいでは塗料に断熱性能をもたらす物にはなりません。ただ一部のメーカーが断熱性のある特殊なセラミック塗料を販売しているというだけなので、この点についても注意しておきましょう。
*耐用年数を決めるのは塗料
ここまでお話ししてきたとおり、セラミックは一定の質を上げる効果はありますが、その配合量によって性能差はバラバラです。つまり、セラミックが配合されていれば外壁の耐用年数がすごく長くなるという認識は誤りです。実際には1割程度耐候性が上がるだけのものが多いのが実情で、ベースとなるシリコン塗料やフッ素などグレードを考えて塗料を使いましょう。セラミックが配合されていたとしても、基本的にはウレタン塗料の耐用年数がシリコン塗料よりも長くなることはありません。
一般的な塗料で断熱性や耐久性を期待するのであれば、セラミックの有無で塗料の良しあしを判断するのではなく、グレードなどを参考にした方が良いでしょう。一番良い判断方法は、塗装業者に相談することです。セラミックという言葉だけで判断すると、塗装工事後に期待した効果が得られなかったというケースも考えられます。
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同じ「セラミック配合」でも見た目は大違い
一般的な塗料ではその質を決めるのは、セラミックではありません。あくまでも添加剤としてプラスアルファの役割となるので結局はベースとなる樹脂塗料に何が使われているかという点が重要になってきます。では、セラミック塗料はなぜ高耐久といわれているのでしょうか。そのことについて詳しく解説していきます。
*石材調塗料=セラミック塗料?
石材調塗料とは、セラミックに高温で色を焼き付けした石状のものを主成分として使用した塗料のことです。セラミックで色を造成するメリットとして、石を吹き付けたような凝った外観にできるという点があげられます。また、一般的な樹脂を主成分とした塗料では顔料を樹脂にまぜて着色を施しているので樹脂の結合力と耐久性が密接に関係しますが、石材調塗料は色自体はセラミックについており、その色褪せに樹脂が影響しないので色褪せにめっぽう強いという特徴があります。そのため、石材調塗料=セラミック塗料として有名になり、「セラミックは高耐久」というイメージが形成されたのだと思います。実際には石材調塗料に関しては樹脂と耐候性に比例的な関係がないのですが、各メーカーはしきりにセラミックを添加剤的に使って耐久性を上げようとした結果として現在の間違ったイメージが定着したものだと思います。
そのため、セラミックが配合されたすべての塗料が、豪華な見た目に仕上がるというわけではありません。あくまで石材仕上げの塗料(=セラミック塗料)を使った場合に限ります。ただセラミックが配合されているだけでは、石材のような外観にはなりません。外壁の見た目にこだわる人は、この点についても押さえておきましょう。
*中には遮熱目的で作られた塗料も
前段落の「セラミック塗装によくある間違い」で触れたように、セラミック塗料の中には遮熱効果が強いとされるものもあります。「日進産業」の『ガイナ』などが有名でしょう。
日進産業の公式ホームページによると、ガイナを外壁に塗装することで日光を反射するため、高い遮熱効果が期待できると解説しています。しかしセラミックが遮熱効果があるのではなく、色に(正確には酸化チタン)に遮熱効果があるのであってセラミックだから遮熱効果があるわけではありません。
*セラミックのイメージを利用するケース
セラミック塗料と聞いただけで、断熱効果やデザイン性の高さを連想する人がいます。ただし、ここまで説明してきたとおり、このような効果があるのは一部のセラミック塗料(石材調塗料)だけです。
もし塗装業者が「この塗料にはセラミックが配合されているので、〇〇効果があります」という営業をしてきたとしても、安易に信じない方が良いでしょう。本当に質の良い塗料を宣伝している可能性もありますが、顧客獲得のために誇張表現を使っている悪徳業者という可能性もあります。またセラミックは樹脂が大事といっているのも間違ってはいませんが、それは石材調塗料には当てはまらないので正しい知識を身に付けることが重要です。
*人気塗料を引き合いに出すケース
前章で紹介したガイナは、とても人気のある塗料です。断熱効果のあるセラミック塗材として、熱さだけでなく寒さや臭い対策にも効果があると宣伝されています。
しかし、塗装業者の中にはガイナのような人気塗料を悪用する企業が存在します。「ガイナを使って塗装をしています」などの言葉により顧客を獲得し、実際の工事では少量しかガイナを使用しないというパターンです。
ガイナのような塗料は厚みを持たすことで断熱効果が出ているので、薄く塗っただけでは効果が期待できません。塗料の性能を引き出すためには、塗装業者がきちんとした施工を行う必要があるでしょう。
セラミックはどのように使われているかを考えましょう
外壁塗装にセラミック塗料を使用する場合、メリットとして見た目の良さや耐熱効果があげられます。ただし、このような効果があるのは一部の塗料のみです。多くのセラミックと名がつく塗料では性能はセラミックの有無ではなく、ベースとなる塗料で決まると思った方が良いでしょう。そのような塗料ではセラミックは、あくまで原料でしかありません。逆に石材調塗料ではセラミックの性能(色褪せに強い)を生かした塗料となりその耐久が20年も超える塗料などもあります。セラミックと聞いただけで良いと思うのではなくそのセラミックがどのように使われているかをしっかり確認し選ぶことが大事です。