外壁塗装工事をする場合の塗料は「艶消し」「3分艶」「5分艶」「7分艶」「艶有り」の5段階から選ぶことができます。「艶消し」と「艶有り」を比べた場合、見た目や機能面にはどのような違いがあるのでしょうか? また、5段階のうちどのタイプを選べば良いのでしょうか?
そもそも外壁の「艶」とは?
塗料には「艶有り」と「艶消し」があり、どちらを選ぶかによって外壁の見た目が変化します。では、具体的にどのような差があるのでしょうか? まずは基本的なポイントを押さえておきましょう。
艶の有無で外壁の見た目が変化
建物の外壁を見た時、「艶」の出方に違いを感じたことはありませんか? ツヤツヤした外壁もあれば、その一方で艶の無い落ち着いた印象の外壁もあります。外壁の見た目にこのような差が表れるのは、塗料の種類が「艶有り」と「艶消し」に分けられるためです(艶消し塗料をマット仕上げと呼ぶ場合もあります)。艶有り塗料にすると新築のように輝いた外壁になり、艶消し塗料にすると光沢の少ない落ち着いた印象の外壁に仕上がります。
とはいえ、依頼主は外壁塗装の際に艶有り塗料か艶消し塗料かのどちらかしか選べないわけではありません。次の章で詳しく説明しますが、艶の度合いは5段階から選べるため、艶有り塗料と艶消し塗料の中間を選択するという方法もあるのです。
艶は5段階から選べる
塗料の艶には5段階あり、どれを選ぶかによって光沢度が変わります。
艶有り塗料と艶消し塗料の中間とは?
前述したとおり、塗料の艶には「艶消し」「3分艶」「5分艶」「7分艶」「艶有り」の5段階があり、一番光沢度が低いものが「艶消し」となります。「3分艶」「5分艶」……と進むにつれて光沢度が上がっていき、最も輝いて見えるのが「艶有り」です。
「艶消し」と「艶有り」の違いには、明確な基準はありません。しかし、おおよその目安は存在しています。塗料の場合、艶消し塗料の光沢度は5以下で、艶有り塗料の光沢度は70以上とされていて、3分艶、5分艶、7分艶はその中間の数値となります。光沢度5と70では、外見的な差が大きいとわかるでしょう。
光の反射率で表すと、「艶消し」は5%以下、「3分艶」は10%以上20%以下、「5分艶」は30%以上40%以下、「7分艶」は55%以上65%以下、「艶有り」は70%以上となります。
艶ありはなぜ輝いて見えるのか?
なぜ、同じ塗料でも艶の度合いに差が出るのでしょうか? その理由は、人の目に入ってくる「光の量」にあります。艶あり塗料を使用した場合、外壁は光を正反射するため目に飛び込んでくる光の量が多くなり、輝いて見えるのです。逆に艶消し塗料を使用した場合は外壁が光を乱反射するため、目に飛び込んでくる光の量が少なくなり眩しく見えないという仕組みになっています。
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「艶有り」と「艶消し」の違い
この章では、「艶有り」と「艶消し」について、外観と機能の2つの面から、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
艶有り塗料のメリット・デメリット
【メリット】
外壁に艶有り塗料を使うと、光沢があるため新築のように輝いて見えます。サイディングであれば、凹凸が強調されるでしょう。また、塗料に添加剤を混ぜていないため、塗料が本来持つ性能をそのまま発揮することができます。
【デメリット】
最初は光沢があるものの、年数が経つにつれて艶は消えてしまいます。突然光沢が消えるわけではありませんが、徐々に「艶消し」のような状態に近づいていくと考えておきましょう。また、人によっては「目立ちすぎる」「眩しすぎる」と感じることがあります。感じ方は人それぞれなので、「外見的に何の問題もない」と感じている人もいれば、逆に「ピカピカしすぎて気になる」という人もいるのです。
もし艶有り塗料を使うべきか迷った場合は、塗装業者に頼んで実際の施工現場を見せてもらいましょう。艶有り塗料を使った外壁と艶消し塗料を使った外壁を見比べることで、事前に外見的な違いを知ることができます。
艶消し塗料のメリット・デメリット
【メリット】
外壁に艶消し塗料を使うと、高級感のある落ち着いた仕上がりになります。周囲の風景と比べても、自然に溶け込んで見えるでしょう。また、艶を抑えたい場合は、艶消しだけでなく「3分艶」「5分艶」など自分の好みに応じて調整することができます。
【デメリット】
艶有り塗料と比べた場合、艶消し塗料は耐候性で劣ります。というのも、ほとんどの艶消し塗料は艶有り塗料の中に「艶消し材」を混ぜて作られているためです。他の物質が混ざっている分、機能性に影響が出てしまうのです。耐候性が低いと外壁の寿命が短くなる可能性が高いため、塗料選びにおいては重要なポイントの一つでしょう。
また、艶を少なくするほど艶消し材の量が多くなり、その分耐候性が低くなります。性能を比較すると、艶有り>7分艶>5分艶>3分艶>艶消しの順番で性能が下がっていきます。
耐候性にはどれくらいの差があるのか
では、具体的に耐候性にどれくらいの差が出るのでしょうか? この点についても明確な定義はありませんが、一般的には、7分艶塗料で艶有り塗料の耐候性の7割ほど、3分艶塗料で3割ほどといわれています。
新しい技術が開発されているため、元から艶消し塗料として開発し高性能なものも販売されていますが、新しいだけに実績が少なかったり、価格が高かったりしますので一般的には艶消し材を入れて艶消しにするケースがほとんどです。
結局のところ、どのタイプを選べばいい?
艶有り塗料と艶消し塗料のどちらを選んでも、それぞれメリット・デメリットが存在します。塗装業者と相談しながら、自宅の外壁にふさわしい塗料を選びましょう。この章では、塗料を選ぶ際のポイントについてまとめました。
耐候性と外見のバランスについて
新築らしい光沢のある外壁を求めるなら艶有り塗料を、高級感のある外壁を求めるなら艶消し塗料をおすすめします。ただし、これは外見を重視する場合の話です。機能性を重視するなら、塗料の性能をそのまま生かせる艶有り塗料の方が良いでしょう。
とはいえ、もともとの外壁の色やタイプによっては艶有り塗料が合わないこともあります。また、人によっては落ち着いたイメージの外壁に仕上げたいという場合もあるでしょう。
艶有り塗料を使った結果、外壁がテカテカしてイメージと違ってしまう可能性も考えられるため、迷ったときは自分一人で決めずに塗装業者に相談することをおすすめします。塗装業者には「塗り板サンプル(塗料を実際に塗ったもの)」があるので、サンプルを見ながら決めると、実物とイメージとの差異が少なくなるでしょう。機能面と外見のバランスをとって、「5分艶」「7分艶」あたりを選ぶという選択肢もあります。
表現の違いに要注意
塗装業者と相談する際には、表現の違いにも気を付けておきましょう。このページでは塗料の種類を艶の有無によって「艶消し」「3分艶」「5分艶」「7分艶」「艶有り」の5種類に分けていますが、業者によっては別の言い方で表すこともあります。
例えば、7分艶の塗料を「3分艶消し」と言うケースもあるので、艶消しの度合いに間違いがないか、外壁塗装工事の前に確認しておくと安心できるでしょう。
艶の度合いは機能と外観のバランスで決める
艶消し塗料と艶有り塗料を比べた場合、耐候性だけで比較すると艶有り塗料の方が優れていると言えます。とはいえ、光沢度が高すぎると「テカテカして目立つ」という印象を持つ人もいるため、その場合は艶を少なくすることで落ち着いた外観に仕上げることができます。機能と外観のバランスを考え、光沢度をやや抑えた「7分艶」「5分艶」あたりを選んでもよいでしょう。