築年数が浅いにも関わらず家のサビが目立つようになってきた、あるいはコンクリート部分の劣化が早い、と感じたことはありませんか。もしかしたらそれは塩害のせいかもしれません。塩害は、海からの潮風によって引き起こされる建物の劣化です。潮風が運んでくる塩分が、家の腐食やサビの原因となっている場合があります。塩害は建物の寿命を縮めることにつながり、大切な家を守るためにも、塩害への対策をしっかりとることが必要です。
1.塩害とは
大気や水に含まれた塩分が、土壌や近くの田畑に影響を与えることで農作物の成長を阻害することがあります。またこれらの塩分は風に乗り、農作物だけではなく付近の電線や建物にも影響を及ぼします。風によって運ばれるものを塩風害と呼びます。
塩害は主に海の近くの地域で起こります。海岸地方ではアルミニウム建材やアンテナ、あるいはコンクリート製の建材にまで塩害による劣化が見られることがあります。さらに風の強い日本海側では雪によって塩分が内陸まで運ばれ、海のすぐそばではないのにも関わらず塩分の影響を受けてしまうこともあるのです。
海の近くの暮らしでは無視できない塩害。大切な家を長持ちさせるためにも適切なメンテナンスが必要です。
2.コンクリートや鉄部に塩害が発生するメカニズム
堅牢なコンクリート建材は一見、塩害とは無縁に見えます。しかし、コンクリートの塩害は内部で密かに進行します。外から分かるころには時すでに遅し、なんてことも…。そんな恐ろしいことにならないためにはまず塩害を知ることが大切です。どのようにコンクリートや鉄部で塩害が発生するのか、そのメカニズムについて解説します。
2-1.なぜ塩害は発生するのか?
コンクリート造の建築物は骨子として中に鉄筋が入っています。この鉄筋が塩分の影響を受けてさびてしまうことで膨張し、コンクリートのひび割れや剥落(はくらく)を起こします。
コンクリート内の鉄筋は、通常強いアルカリ性で保護された緻密な膜を形成しているので、さびにくくなっています。しかしコンクリート自体が潮風にさらされ続けることで塩分濃度が上がっていきます。そうしてコンクリートに含まれる塩分が一定の濃度を超えてしまうことで、鉄筋を守っていた被膜も破壊され腐食が始まってしまうのです。
このように一度劣化してしまうと、外側から補修しても再劣化する可能性が非常に高くなります。
2-2.塩害のメカニズム
塩害のメカニズムを詳しく見ていきましょう。
コンクリート内の鉄筋は常にセメントに囲われていますので、常に水酸化カルシウムが補給されている状態です。そのため高いアルカリ性の状態を保っています。この時鉄筋は「不導体被膜」という緻密な膜で保護されています。
ところがセメントの塩分濃度が上昇しますと、それによって発生した塩化物イオンが被膜を破壊してしまうのです。守りを失った鉄筋はコンクリート内の酸素や水分に無防備になってしまい、直接それらの影響を受けてさび始めます。
しかし、もともとコンクリート自体にも塩化ナトリウムなどの塩分は含まれています。だからといって鉄筋は直ちにこれらの影響を受けるわけではありません。潮風、海水、凍結防止剤などによって徐々にコンクリートの塩分濃度が上昇し、一定濃度を超えることで初めて腐食やさびが始まるのです。
つまりコンクリートの塩害は、周囲の環境に大きく左右されることが分かります。塩分の影響を受けやすい地域の建物ほど、塩害によるコンクリートの劣化が早まります。
一度鉄筋の腐食が始まってしまうと、鉄筋自体が膨張し周囲のコンクリートにひび割れを生じさせます。そして、割れた部分からさらに腐食因子が入り込むことでより腐食が進むという悪循環に陥ってしまうのです。一度塩害によって劣化が始まると、適切な補修がされない限り繰り返し劣化することも多いです。塩害の多い地域の建物はその辺りを踏まえた対策が必要です。
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3.塩害を受ける距離は海からどれくらい?
海沿いの地域が塩害が多い、とはいうものの具体的には海からどの程度の距離までが注意すべき範囲になるのでしょうか。
当然、海に近ければ近いほど注意が必要ですが、一般的には海から5キロメートル圏内が塩害が出やすい範囲です。
ところが、海から近い土地で暮らしている方は感覚的にご存知かもしれませんが、この5キロ圏内であっても塩害が発生する場合があります。風向きによってはかなり遠方まで塩分が運ばれるからです。逆に、風向きのおかげで海の近くにもかかわらずあまり塩害が出ないというところもあります。
その土地が塩害を受けにくいかどうかを判断するには、いくつかのチェックポイントがあります。
・海から5キロメートルの範囲外である
・潮風のにおいがしない
・周辺の建造物の鉄部にサビが少ない
これらをクリアしていれば、とりあえずは安心だといえます。しかし、絶対に塩害が起きないという場所は存在しませんので、どこであっても対策を考えておくことは必要です。
日本は四方を海で囲まれた、非常に潮風の影響を受けやすい土地です。塩害のあまりない地域というのは数えるほどしかありません。つまり、国内ならばほとんどの地域が塩害対策とは無関係ではいられないということになるでしょう。
特に塩害がみられるのは、関東地方を中心に茨城県・千葉県・東京都・神奈川県・静岡県・愛知県・愛媛県です。この地域にお住まいの方は、塩害によって建物の劣化が引き起こされる可能性を常に念頭に置いておくことをおすすめします。
4.コンクリートや鉄部が塩害を受けたときの対策
塩害を受けた部分をそのままにしておくことは大変危険です。建物自体の劣化を早めることになりますし、場合によっては開いてしまった穴から雨水が入り込み、軒下の電気機器のトラブルを引き起こす可能性もあります。
そのようなことにならないためにも、塩害を受けた建物のメンテナンスは必要不可欠です。
すぐできる対策を以下で説明していきます。
・塗料の塗り替え
海沿いの地域は内陸部よりも建物の塗装の耐久年数が短く、通常より2~3年ほど寿命が早まってしまいます。そのため、こまめな塗り替えが必要となります。この時に耐塩性や耐候性のある塗料を使用することで塩害への対策ができるのです。
・壁の張り替え
外壁自体を耐塩性・耐久性の高いものに取り替えることによって、より塩害に強い建物になります。
塩化ビニル樹脂製の外壁材である樹脂系サイディングが、塩害対策としてはおすすめの素材です。樹脂系サイディングはビス固定できるので、コーキング剤での固定が不要です。なのでコーキング代がかからず、メンテナンス費用を抑えることができます。また、樹脂系サイディング自体に最初から顔料が加えられていることが多いので、色落ちがしにくいのも特徴です。ただ、非常に扱いやすくリーズナブルな素材ですが、見た目がやや安価なのでデザイン性を重視する場合は不向きかもしれません。
5.塩害を塗料(塗装)でメンテナンスする方法
塩害の放置ではさまざまな建物の劣化を引き起こします。塩害が進行してしまった後では、高額なメンテナンス料が必要になってしまうかもしれません。そうなってしまう前に早めの対策をとることが大切です。
塩害から家を守るには、塗料によるメンテナンスという方法があります。
塩害対策としておすすめの塗料は、「フッ素系塗料」や「変性無機系塗料」などです。これらの塗料は一般的なエポキシ樹脂系の塗料、ウレタン塗料やシリコン塗料と比べ、緻密な被膜を形成することが特徴です。その細かな樹脂被膜によって紫外線や塩害などから建物を守ります。これらの塗料は耐久性や耐候性があり非常に優れていますが、その分価格も高めです。
また、外壁面を塗装する場合、サッシや雨戸などの金属製の部分も同時に塗装することをおすすめします。これは、外壁部分と金属の付帯部への塗料の耐久性に差があると、先に付帯部が劣化してしまうことがあるからです。金属部分におすすめの塗料も、外壁面と同じくフッ素系や変性無機系の塗料です。
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「塩害の放置は家の寿命を著しく奪います」
塩害は知らず知らずのうちに進行し、大切な家の劣化を引き起こしてしまいます。そうなってしまう前に外壁塗装などのメンテナンスを行うことが必要不可欠です。
塩害対策のための塗料は、実にさまざまな種類があります。一般的なのはエポキシ樹脂系の塗料です。特にガラスフレーク入りエポキシ塗料というものが、防食性があり金属部の腐食を防ぐため重用されてきました。しかし現在は、より性能の高いセラミック粒子入りの新しいエポキシ樹脂系塗料も登場しています。このセラム防食塗料は、今までのエポキシ樹脂系よりも母材との密着力が高く、高い耐摩耗性と弾力性があり、水分を通しにくいという特徴があります。
工場などに設置されている排水設備や沈降槽は、腐食を防ぐために防食塗料で塗装されます。これらの内面用の特殊防食塗料として、長らくタールエポキシ樹脂塗料が使用されていました。しかし、このコールタールは現在特定化学物質に指定されているため使用、制限されています。これに代わる形で使われるようになったものが、環境に負荷をかけないセラム防食塗料なのです。
また、外装用塗料には他にもフッ素系塗料や、変性無機塗料である「常温ガラスコーティング」というものも存在します。このような多くの情報や商品の中から、家の外壁に最も適した性能の塗料を選ぶのは至難の業です。家の寿命を長く保つためにも、塩害対策は専門の業者に相談することをおすすめします。また専門業者であれば、金属塗装面の脱脂処理や高い技術による塗りなど専門技術でしか出来ない作業によって、より長持ちで美しい塗装が叶えられるでしょう。
まとめ
・海の近くでは、コンクリートや金属の腐食を招く塩害が発生しやすい
・塩害を受けた建物は、塗装の塗り替えや壁の張り替えなどのメンテナンスが必要
・緻密な被膜を形成する防食塗料での塗装が、塩害対策に有効