一口に外壁といっても、モルタル・タイル・レンガ・板張り・サイディングなど、数多くの材質が使われています。しかし、それらの材質に合わせて塗料を使い分けたり、材質の特徴を生かしたりできるのが、プロの仕事です。そこで、さまざまな材質があるなか、特にその技量が問われる「木材」に着目。今回は、板張りの壁やウッドデッキに見られる「木部」での外壁塗装についてご紹介します。
木部が使われやすい外壁箇所
木部といえば、木の模様や直線具合などの「木目」をデザインとして生かすこともできます。そうしたデザイン性を重視したものから実用的なところまで、木部が使われやすい外壁での箇所を見てみましょう。
- 縁台(縁側の木の部分)
- 玄関ドア
- 玄関アプローチ(枕木の一本ものなどを使用)
- ウッドデッキ
- ラティス(木製のフェンス)
- 窓枠
- 戸袋(雨戸を収納するスペース)
- 木製サイディングボード(板張りの外壁)
- 破風板(屋根と外壁の間の部分)
- 軒天井(突き出た屋根の裏側の部分)
- 鼻隠し(軒天井の先端部)
外壁塗装での木材の特徴
木部はデザイン性を備える反面、モルタルやサイディングなどの塗装と比較すると「寿命は半分程度」といわれています。ここでは、そうした理由を含めた「外壁塗装における木材の特徴」を解説します。
*木材の性質と特徴を知る
木材には、主に「水分などの湿気を『吸収もしくは放射』する」という人間と同じ呼吸のような性質があります。また、そうした調湿機能を持つことから、木の形を伸縮させる作用があるのも木材の特徴です。調湿機能とは、例えば木材が雨で濡れた場合、余分な水分を吐きだすことで、木の性質を一定に保とうとする働きです。ただ、すべての水分を吐きだしてしまうと、紫外線などに照らされ続けた場合に枯渇してしまうため、ある程度の水分を残しておくのも木の性質です。調湿機能が作用することで、水分過多による「腐食」や、乾燥が続いた際の「ひび割れ」などを防いでいます。では、外壁の木部に塗装を施すと、どのような状態になるのでしょうか?
*木部の塗装寿命が短い理由
一般的に外壁塗装で使われる塗料は、塗装した面で固まり、その部分に塗膜と呼ばれる保護膜ができます。もちろん木部塗装でも同じように「塗膜で保護」されますが、木材の内部まで固まるというわけではありません。内部では、前述した“木材の呼吸”が繰り返されている状態です。よって、表面の塗膜を剥がそうとする働きが加わる結果、外壁塗装に「ひび割れ」が生じやすくなります。ちなみに、モルタルなどに見る「木部以外の外壁塗装の耐用年数は約10年が目安」になる一方、木部塗装の耐用年数は「3~5年程度」が目安といわれています。つまり、木部の塗装は一般的な外壁材の塗装効果と比較すると半減するため、維持しにくいといえるでしょう。
木材に適した塗料
デリケートな性質を持つ木部では、塗料を施す際にも配慮しなければなりません。ここでは、木目にかかわる2つの塗装方法を解説しながら、主な塗料や特徴などにも触れていきます。
*塗料は「浸透タイプ」&「造膜タイプ」の2つ
木部塗装では、木目を生かす「浸透タイプの塗料」と、木目が消える「造膜タイプの塗料」という2つのタイプがあり、施主の希望などに応じて使い分けるのが一般的です。まず、浸透タイプの塗料は、その名称のとおり「木の内部まで塗料が浸透する」という大きな特徴を持ちます。ところが、内部に塗膜(保護膜)をつくることはありません。つまり、塗料の剥がれや膨張は防げる反面、耐久性が低いという二面性を持ち合わせています。一方、造膜タイプの塗料は、木目を消してしまう代わりに、木の表面に強力な塗膜をつくるため、浸透タイプの塗料より高い耐久性を誇ります。また、撥水性も優れているのが、造膜タイプの塗料の特徴でもあります。そのほか、造膜タイプの塗料の中でも、木目を残せる「クリアタイプ」というのもあるので、木目を生かしつつ耐久性も求めたい場合にはオススメです。それでは、2つの塗料についてもう少し掘り下げてみましょう。
*浸透タイプの塗料
- 代表的な塗料:木材保護着色塗料、着色仕上げ、ステイン
- 塗装の目安:3年に1回
- 主な効果:防カビ性を備える
- 質感:木肌を残せる
- 弱点:艶が出にくい
*造膜タイプの塗料
- 代表的な塗料:合成樹脂塗料(アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素など)
- 塗装の目安:2年~5年に1回
- 主な効果:耐水性を備えるほか樹脂の種類によって効果もさまざま
- 質感:塗膜を残すため木肌は残せない
- 弱点:下地処理に時間を要する
- 艶:仕上げの調整が利く(艶あり、5分艶ありなど)
- 仕上がりが多彩:ワニス仕上げ、クリアー仕上げ、着色仕上げ、エナメル仕上げなど
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木部塗装の一連の流れ
木部を塗装する際の作業日数は、施工面積などにもよりますが、一般的には3日前後といわれています。ここでは、塗装前に施す「下地の調整」から、仕上げとなる「上塗り」まで、3つの工程に分けて解説します。
*下地処理
以前の塗料が浸透タイプであれば、下地処理にて主に「汚れ」を除去します。浸透タイプの塗料は剥がれや膨張などが起こりにくいほか、重ね塗りも可能なため、剥離作業などが少なく時間を取られないのが一般的です。一方、以前の塗料が造膜タイプの場合は、汚れ以外に「塗膜」も除去する必要があります。造膜タイプの塗料は、浸透タイプの塗料とは違い「木部に強力な塗膜を形成する」ため、剥離作業を要する結果、時間がかかります。
*下塗り
木目を生かす場合は下塗り塗料を施したあと、乾く前に布で拭きながら全体に浸透させます。下塗り塗料は、浸透タイプの2液油性などを用いるのが一般的です。逆に木目を消すのであれば、水性の厚膜シーラーをはじめ、1液タイプのウレタンといった、造膜タイプの塗料に適した下塗り塗料を使います。
*上塗り
浸透タイプの塗料を使う際は、3回ほど上塗りをするのが通常です。造膜タイプの塗料では細かい部分を先に塗り、ムラに注意しながら2回ほど塗り重ねていきます。
木部塗装の注意点
実績のある塗装業者であれば、木部塗装の知識や技術は把握しているものです。しかし、知識がなかったり、あえて手短に済ませようとしたりする塗装業者も存在します。そうしたとき、以下の2点を知っておくと便利です。
*使う塗料の種類に注意する
木部の既存塗膜を残したままで塗装してしまうと、外壁塗装の効果が失われてしまいます。例えば、以前に塗られていた塗装が造膜タイプの塗料で、その上から浸透タイプの塗料を施すケースなどが挙げられます。そうしたことから、木部での外壁塗装を検討する際は「どのタイプの塗料を使うか」ということを明確にしておくことが大切です。また、塗料を明確にしておけば、下地処理の段階からトラブルも回避しやすくなります。
*保証期間に注意する
木部塗装では、その耐用年数が一般的な塗料より短い、ということを念頭に置くことが必要です。通常、外壁塗装には塗装後の保証期間が設けられていますが、木部に関しては対象外、もしくは木部だけ保証期間を別にしてある、というケースも少なくありません。そのため、保証期間の有無はもちろん、対象となる年数も事前に確認しておきましょう。
クオリティ+安全+スピードを求めるなら「塗装業者」がオススメ!
木材の質感などに配慮した塗装が実現できれば、色合いや風合いを生かした外壁へと様変わりします。一方、木部塗装はDIY感覚でも実践できますが、刷毛や塗料といった「施工に必要な道具や材料をすべて自分で揃えないといけない」ほか、「足場作業なので危険を伴う」などのリスクも考えられます。その点、一定以上のスキルを持つ塗装業者に依頼すれば、長い耐久年数が期待できて、満足のいく見た目も楽しむことができます。また、短い施工期間で済むほか、塗膜の厚みが均一など「納得できる仕上がりも望める」ため、プロに任せてみるのも一つの手かもしれません。